356.子どものための造形を考えた日本人
2021-05-16


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ムナーリと直接関わらないトピックなのですが、日本にもムナーリと同時代に、こどものための造形教育について深く考えた教育者がいます。
その一人、藤田復生(1910-1999)の著書『幼児の造形 紙』(1970、フレーベル館)には、ムナーリのアプローチとの共通点が感じられます。

乳児期の造形活動
 幼児の生活の中で、紙に対する経験は, かなり早く, 満1歳の乳児の頃より, 無心に破る行為が始まり, 2歳を過ぎる頃から, はさみを与えると, 紙を切ることを始めます。 (もっとも, 家庭によって, はさみを与える時期の,早い遅いはありますが)
 また, 同じ頃に, 紙と描くものを手にすれば, 描画が始まり, 紙で物を包もうとする行為が見られ,たたむ・まるめる・くるむなどの行為が見られます。  この時代は,まだ,紙でものを作る意志や意欲は見られませんが,破ること,切ること,たたむことに興味を示します。破ることも,切ることも, 一種の破壊行動で,心身の発達からみても,単一動作です。
 すなわち,破るにしても,縦に力いっばい引きさくことだけで,指先の調整は見られません。はさみも同様で単一動作の切り方で,切ることだけにとどまります。

3歳児期の造形活動  満3歳を過ぎると,指の調整ができ,連続動作に移り,連続した直線切りに移ります。はさみの使用は,家庭の生活で,兄弟のいる,いないによっても,経験の量の多少によっても,発達の個人差によっても,能力の差はありますが,幼稚園の3歳の集団でみると,その差の幅は5カ月ぐらいです。  したがって,はさみの経験を, 3歳からはじめて持ったとしても,約半年の間には,完全な連続切りが可能になるといえます。(これは,個人差がありますが)
曲線切りは,かなりむずかしく,さらに,半年ほど遅れます。形を切り抜く意図がみられるのも,描画に形の形成がみられてからといえます。
 破ることは,比較的早く始まりますが,ちぎることより,切ることの方が先行します。これは,指先の器用性の発達にしたがって,可能になるからです。
 折ることについては, 3歳6カ月になると,三角折り四角折りは,大半の幼児が可能で,かなりの正確度をもって,折ることができます。いうまでもなく,三角折りの頂点を合わせることが,視覚と手の共応作用でできてくるからです。四角折りも,一辺合わせ一角合わせの原則によって視点を一カ所にしぼることが大切です。
 そして,三角・四角という言葉の概念の理解ができるということや,半分という概念が形成されたことになります。
 このような造形作業は, 指導者の子どもへの話しかけ (説明) やほんの少しばかりの注意によって, 理解の度合いが違ってくるので, 教師は注意しなければいけません。
 たとえば, 正方形の紙のときと, 長方形の場合は, 辺の長短という, 2 つの要素がありますので, <2つに折る> <半分に折る>という言葉が, 2通りになりますので, 教師が見せながら, 説明することは当然ですし, 短い, 長いの言葉を理解できる段階にあるか, ないかということが, 重大な結果を示すことになります。
また, 3歳児では, <2つに折る> という言葉よりも, <半分に折る>という言葉を用いることが大切です。2つということは,子どもにとって,別々なものを意味することが多いからです。
 3歳6カ月頃では,長い,短いの概念がはっきりしていませんので, 一般には.理解されにくいものと考えなければなりません。
<まるめる>ことも, 3歳では,円錐の場合,紙の張りがあるので,糊づけができません。しかし,円筒ならば,細く巻いて,糊づけをして止めることができます。
 したがって, 3歳では,紙の造形は,あまり技術的なものを避け,ごく基本的な折りたたみを考え,平面的な作業を基本と考えなければなりません。
 ただ,その中に.多少の立体的なものを加えていかなければ,意欲を失いますから, できる範囲で, 子どもに形を作らせ, 教師が接着を助けてや るようにします。

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